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ゼットの言葉はウルトラ難しいぜ―完結編―

 

はじめに:ご唱和ください、我の名を

「ご唱和ください、我の名を」という、意味はわかるけれどもなんとなく日本語として不自然なキャッチフレーズ/変身コールからウルトラマンZに興味をもったひとも多いだろう。かくいうわたしもそのひとりで、キャッチーなウルトラマンZ一話に引き込まれて五話のヘビクラ隊長からオーブを見始めるという典型的なパターンを経て、あれよあれよとニュージェネレーションズウルトラマンの視聴を始めてしまい、なぜかメビウスまで見た(おもしろかったし大好き)
今は最終回を見た直後によかったな……ウルトラマンZ……二期どころか三期やっても構わないんだよ……あと映画ないの?みたいな気持ちでこの文章を書いています。
九月にはそれまでに放送されていたいくつかの話数からゼットの台詞を取り出し、「Zの言葉はウルトラ難しいぜ」としてまとめた。その際は、台詞数も少なかったことがあり十分なまとめができなかったので、今回は最終回までの全台詞を収集し、ある一定のパターンがないのかと分析を行ってみた。
その結果、ゼットは「説明」をする際はいわゆる「普通の日本語」を話していることが多いが、「命令」「依頼」などをするときには日本語が妙になる傾向があることがわかった。
ここでは、「ゼットの日本語が不自然さとは何か」「ゼットの口調からみられるキャラクター像とは」について考察してみたい。また、「もしかしたら光の国には〈地球の言葉〉があるんじゃないか?」という与太話もやってみよう。

前提

この記事では基本的に、ゼット世界、及び日本で放送されていたウルトラマンシリーズの世界では日本語が話されており、ゼットは日本語を話していたと仮定する。
また、光の国ウルトラマンたちは地球人類に類似した文法を持つ音声言語を話しているということにする。宇宙人同士ではテレパシーで会話している描写もあったが、口のようなパーツも見受けられるし、音声による会話をしている可能性は十分にあるのではないだろうか。
なぜなら、これから書くのは日本語を含む人間の言語に対する研究をつまみ食いしてそれっぽく使用したテキストだからである。テッド・チャンあなたの人生の物語」よろしく、宇宙人の言語そのもも言語学でどうにかなる可能性はあるが、残念ながらウルトラマンZから「純粋な宇宙人の言葉」を読み取ることはできない。あの「ジャッ!」みたいなやつもどうにかすれば解読できるのかな……
あれだけ進化した宇宙人ならば音声や手話などといったシンボルを使用した言語、どころか人間に類似した言語など使っていないのでは?もっと効率のいいコミュニケーション手段があるのでは?と思った向きは小林泰三『AΩ』を読んでいただきたい――がZ最終回を見たらまた別の意味に取られてしまうような気がする。でも読んで。

また、ゼットの日本語の妙さに関しては、自分が妙だなと思ったものについて判定する。内容的におかしいものよりも、文法、用法、文脈的におかしいものについてカウントした。
人によって異なる判断基準があると思うので、違うと思ったらみんなも自分でやってみてください。
わたしが喜びます。

 

ゼットの日本語の「不自然さ」とは

ここでは、ゼットの「不自然な」日本語について、それがいつ、どうして起こっているのかについて、発話の機能と「マニュアル敬語」から考える。
ウルトラマンZ本編25話すべての台詞(一話以外の「ご唱和ください、我の名を」、技名を除く)をカウントしたら268であり、そのうち、「ウルトラ〇〇」を含む、妙な日本語を話しているのは59で、全体の約22%にあたる。*1
このうち、ゼットの特徴的な強調フレーズである「ウルトラ」を、ここで多く取り上げることはしない。*2ひとつ指摘することがあるのなら、これは「とても」や「すごく」といった、日本語の強調表現と完全に互換性があるというわけではないということだ。

ほう、ウルトラ勘がいいな!(1)
ウルトラ緊急事態だ、お前の身体を借りるぞ。(7)*3

前者は「とても」と交換しても違和感がないが、後者は「とても」というよりはむしろ「すごい」や「かなりの」という意味合いに近い。
ゼットの「ウルトラ」は、語やフレーズを強調する、幅広い意味を持ったことばだといえるだろう。

(1)説明はできるゼットくん

まずは、ゼットが普通のことばで話している例を紹介しよう。常になんだか不思議な言葉遣いをしているわけではなく、案外普通に喋れることも多い。ゼットの台詞を、その発言が持っている機能に着目し、「説明」「命令」「勧誘」「依頼」などに分類した。その結果、ゼットは多くの場合、「説明」はできるということがわかった。

今宇宙のあちこちで、デビルスプリンターって呼ばれる邪悪な因子を呑み込んだ怪獣が、凶暴化して暴れまわる事件が続いている。
先輩たちの力が込められたウルトラメダルは、その対応策として開発されたんだが、こないだの宇宙怪獣、ゲネガーグが突然光の国を襲撃してきて、メダルやそれを使うためのアイテムを丸呑みして逃げ出したんだ。
オレは、師匠のウルトラマンゼロと一緒に追いかけたんだが、師匠は、四次元空間に飲み込まれちまって。
オレが一人でヤツを追って、この地球まで来たってわけ。(2)

なんとこんな長台詞でもまったく普通の日本語を話すことができている。わかりやすさという、作劇上の都合といってしまえばそれまでかもしれないが、ゼットは「説明」が比較的得意なのである。
また、ゼットの日本語が妙だといっても、情報の出し方の順番がおかしいとか、教科書的な文法の誤りはないことにも注目したい。ゼットが起こすのは単文の中の意味的なミスが多いのだ。

 

(2)命令はできないゼットくん

次に、どのような場面でゼットの日本語が妙になるのかを考えてみよう。ゼットは、命令、依頼、勧誘などといった場面で日本語が妙になることが多い。

ハルキ、先輩たちの変幻自在の神秘の光をお借りするんだ!(8)(命令)
お頼み申し上げます。(1)(依頼)
ハルキ、パネエのいっちゃいますぞ!(19)(勧誘)

このような発話は、一見してこの文だけでどこかがおかしいということがわかるだろう。次に、どうしてこれらの発話におかしさがあるのかについて考えてみたい。

 

(3)マニュアル敬語とゼットくん

「ゼットのことばってコンビニ敬語っぽい」「エキサイト翻訳」という感想が、特に初期にはままみられた。質問や命令になると妙な発話になってしまうゼットのことばの「おかしさ」はどこにあるのだろうか。
上の例にもあてはまるが、命令や勧誘の表現では、敬意表現が用いられることが多く、そのミスが、ゼットのことばの「おかしさ」につながっている例がいくつかある。
例えば、ゼットの敬語のミスは、このような文に見受けられる。

この野郎(=ベリアロク)、速やかに抜けやがりなさいよ!(15)(命令)
ホロボロスがお休みになります!(16)

直すなら前者は「さっさと抜けろ」後者は「眠られます」あたりが妥当だろうか。前者の場合、通例経緯を向けない相手(抜けないベリアロク)に対して敬語を使おうとしているため、後者は敬語の構築のミスによっておもしろい表現になっている。
文化庁が「マニュアル敬語」と呼んでいる概念がある。「コンビニ敬語」などとも呼ばれるそれは、新入社員等の研修に用いられる、マニュアル化され、形式化された敬語のことだ。それを用いていると、どのような相手であれ画一的な敬意表現を使うこととなり、上記のような「妙な」表現になってしまう。「お分かりにくい」、「お読みやすい」などがマニュアル敬語の例として挙げられているが、ゼットが使いそうな表現ではないだろうか?
また、マニュアル敬語についてはこのような指摘もある。


マニュアルというもの自体が,敬語にまだ習熟していない人,特に,その職場に特有の言語場面での敬語にまだ不慣れな人のためには有効なものであるということも指摘したいと思います。敬語の使い方には,相手や場に応じた幾つかの典型例や型があり,職場などごとに用意されるマニュアルは,そうした典型例や型を示すことによって,まだ習熟していない人への手引として有効なものとなり得ます。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/keigo/chapter5/detail.html
ゼットはマニュアル敬語を用いることによって、どうにかして地球の言葉でのコミュニケーションをろうとしているのかもしれない。

余談ではあるが、文化庁のサイトではゼットがいかにもやりそうな敬語の「ミス」がたくさん紹介されているので、興味があったらぜひ見てみてほしい。

 

(4)敬語を混ぜるゼットくん

ゼットのことばはマニュアル敬語的だという指摘をしたが、マニュアルすらも使えていない面がある。
以下の例では、一文目は丁寧な表現なのに、それ以降いきなり常体になっている。

さあ、そのウルトラゼットライザーのトリガーを押します。
その中に入れ。
そのウルトラアクセスカードをゼットライザーにセットだ。(1)

常体と敬体は混ぜないというのが敬語における基本的なルールのひとつだ。一文だけで見ると、「そのウルトラアクセスカードをゼットライザーにセットだ」は特に問題のない発話だが、流れで見てみると違和感がある。このように、ゼットは一文なら普通だけれども、会話の流れでは奇妙になってしまうことがあるのだ。

 

おまけ:ゼットくんは地球の言葉がうまくなってきている

実は、ゼットは地球の言葉が上達してきている、1-8/9-16/17-25と全体を分割して、ゼットくんの不思議な言葉遣いの割合を調べると、それぞれ32%、27%、17%となる。後半に行くにしたがって、ゼットは「普通のことば」を話すようになっているのだ。
ちなみに1,2話でのゼットの台詞数は61であり、全体の4分の1弱である。序盤で妙な日本語というフックを使いキャラ立てをしておくのが大事というのがここからもわかるだろう。

 

ゼットの口調からみられるキャラクター像とは

ここでは、「役割語」「属性表現」という概念を補助線にして、ゼットの口調が示しているキャラクター像について考えていきたい。

 

(1)役割語

役割語とは、「ある特定の言葉遣いを聞くと特定の人物像が浮かぶ、あるいはその逆に、特定の人物像から特定の言葉遣いが想起されるようなもの」であり、例として、〈博士〉キャラクタの語尾、「~じゃ」、〈猫〉キャラクタの「~にゃ」などが挙げられる。
役割語は必ずしも現実の人間が使う言葉遣いと一致しているわけではなく、むしろ現実とはかけ離れたものが「キャラ付け」のためにフィクションや翻訳で使われることが多い。*4

 

(2)これまでのウルトラマン役割語


ウルトラマン役割語についての先行研究として秋月高太郎「ウルトラマン言語学」「続・ウルトラマン言語学」がある。ここでは、昭和ウルトラマン役割語は〈神様〉、ウルトラマンゼロ役割語は〈ヤンキー〉であると分析されている。
〈神様〉キャラクタである昭和ウルトラマンたちは、は一人称「わたし」を用い、他人(地球人)への呼びかけとして「君/お前」を使う。(ウルトラマン同士の会話では名前で呼び合うことが多い)
この論文では、昭和ウルトラマンたちが〈神様〉の役割語を用いる理由として、ウルトラマンたちが「未知の存在」であり、「神」に等しいからであると考察されている。また、ウルトラ兄弟の設定が導入されたことによって、「兄弟」同士は「人間」的な言葉遣いの会話をするようになり、ウルトラマンたちの神性が下がったのではないかという指摘もされている。

一方、ウルトラマンゼロは〈ヤンキー〉的な言葉遣いをしていると考えられている。〈ヤンキー〉は一人称「おれ」、他人への呼びかけは「お前」であり、終助詞「ぜ」、断定の「だ」を多用するなど、〈女ことば〉を排除した〈男ことば〉の下位分類である。
これによって、ゼロは従来のウルトラマンたちよりも「若く」「不良少年的」なキャラクター付けがなされることとなった。
しかし、ゼットの言葉遣いはそのどちらとも大きく異なっている。確かに、ゼットは「ぜ」という語尾を使うが、他人への呼びかけは基本的に「名前」であり(ハルキとしかほぼ会話をしていないということもあるが、名前を呼ぶことがものすごく多い)断定の「だ」はあまり使わない。
〈ヤンキー〉というよりはむしろ〈舎弟〉的な言葉遣いにも見える(もしそのような役割語があるのであれば)が、たまにどことなく超越的な口調でも話す。

地球人が自力で怪獣を倒せるようになるのは、いいと思うぜ。それはこの星の人類が決めることだ。(21)

ゼットのことばは役割語だけでは捉えられないのではないだろうか?ということで、属性表現という考え方についても検討してみよう。

 

(3)属性表現とは

属性表現とは、フィクション内でのキャラクター立てとして用いられる口調のことで、例としてはいわゆる「ツンデレ」口調などがある。役割語との違いとしては、実際に存在する人物像との結びつきがなく、あくまでもフィクション内での表現効果であるということと、口調が表現するのは性格の全体ではなく部分であると考えられている。
ゼットのことばはどちらかというと役割語よりも属性表現なのではないだろうか?しかし、これまでのウルトラマンたちの役割語も、ゼットのキャラクター像読解には使用されているのではないだろうか?という視点で考えてみたい。

 

(4)「ゼットの言葉」とキャラクター像

以下の表現は、一見したら特におかしくはない。ただ、「ウルトラマンゼット」の発話だと思うととたんに「おかしな」ものになる。それは一体なぜだろうか?

あの子からメダルをもらおう!(3)
ハルキ、ウルトラフュージョンだよ!(15)

想像してみてほしいのだが、これらの台詞がもしも「妖精」や「かわいいマスコット」のようなキャラクタから発せられていたらどうだろうか?それなら、問題なく普通の台詞として受け取られるのではないだろうか。
つまり、これらの台詞は「ゼットのこれまでのイメージ」を覆す印象の発話だから「おかしい」のだ。これまで見てきたように、ゼットのことばは〈神様〉でも〈ヤンキー〉でもない。
ゼットのことばは、どちらかというと「男性的」ではあるが、完全に「女性性」を排除したわけでもない。それらが以上の発話に現れてきているのではないだろうか。このふたつの例は、比較的「女性的」もしくは「子供」の発話に近いように思われる。
ゼットは、「~だぜ」や「だ」といった、(これまでのウルトラマンに期待されていたような)断定的、男性的な表現を多く使用すると思いきや、こういった表現も用いることによって、ある種の「多面性」を表現しているのではないだろうか。そしてそれが、「正義感はあるが表現型がちょっと軽薄」のような、本編で示されているゼットの多様な性格の一部を構成しているのではないだろうか。

また、ゼットはハルキのことを基本的には「ハルキ」と名前で呼ぶ。これは、ハルキと対等に接していることを示し、昭和ウルトラマンやゼロとは違った特徴であるといえるだろう。
そして、これはゼットのことば全体が、現実に存在する人間のキャラクタに根ざしたものであるとはいえないので「役割語」というわけではなく、どちらかというと「属性表現」に近い。
かといって、既存のフィクションキャラクタの枠組みにゼットのようなものはいないように思われる。日本語が妙だからといって「片言の外国人」みたいなステレオタイプなキャラ付けをしなかったところが、個人的には好感の持てるポイントだ。

 

どうしてゼットくんは不思議な日本語を話すのか

ここまで、ゼットの言葉や、そのキャラクター付けについて考えてきたが、そもそも、どうしてゼットはあのような言葉遣いをするのだろうか。
もしかしたら、ゼットの言葉の不思議さは光の国で使われている言語(以後光の国語)からの母語干渉なのではないだろうか?
母語干渉とは、母語第一言語)の特性が、違う特性を持つ第二言語以降を習得する際に影響してしまうことである。たとえば、日本語母語話者が英語を学習しようとする際には、日本語ラ行と英語のr/lの発音は異なるにも関わらず、区別がつかないというのはよくあることだろう。また、文法的な面でも、かなりの上級者となってもtheとaと無冠詞、単数と複数の使い分けに困るということもある。
(なお、ゼットの母語は光の国語であると仮定する。光の国が多民族社会である可能性はあるが、今までの作品ではとりあえず言葉は通じているように思われる)

例えば、ゼットが敬語をうまく使うことができなかったり、一般的にひとりの人間が使う言葉遣いのレパートリーから外れた物言いをするのは、光の国には敬語がなかったり、多くの一人称や口調でキャラクターを示す習慣がないからなのではないかと推測できる。
(ウルトラ銀河伝説や、ギャラクシーファイト系列など、ウルトラマンたちが多数登場して会話する作品は多々あるが、そういった作品では光の国語が日本語に翻訳された状態でお送りされているのでこれまであまり気付くことはなかったのかもしれない)

英語という、日本で広く学ばれており、参考書がたくさんある言語であってもさまざまな困りごとがあるのだから、地球という辺境の惑星の一言語である日本語を学習している光の国の人々は相当な苦労をしていたのだろう。

まったく違和感のない日本語を話していたこれまでの光の国産ウルトラマンたちは、相当勉強していたに違いない。

与太話:バベルの超克、あるいは光の国の外国語学

ここでは、「ゼットが地球で話しているのは日本語である」という前提を崩して、ありうるひとつの可能性の話をしたい。
さて、この台詞に違和感を覚えなかっただろうか。

地球の言葉はウルトラ難しいぜ。(1)

まあそうだ。違和感しかない。Tシャツにもなるくらいインパクトのあるフレーズだ。
ここで考えてほしいのが、ゼットが学んでいるのが「日本語」であるのならば、このような言い方はあまりしないはずだということだ。なぜなら、その言語を学んで最初の方に知る単語が、その言語の名前と、それを話す人々の名前だからだ。日本語なら「日本語」、英語なら「English」、フランス語なら「Français」……きっと教科書の表紙にでも書いてあるはずだ。
ならばなぜ、ゼットは「地球の言葉」という言い方をしたのだろうか。日本語ではなくて。
それは、ゼットは光の国で「地球の言葉」を習ってきたからなのではないだろうか?
ゼットが地球の、日本にやってきたのは偶然でしかない。文字通り星の数ほどある星の、一地域の言語をすべて学習していたらとてもじゃないけどウルトラマンの寿命でも足りない。地球上の言語数は3000~5000といわれている。ウルトラマンたちが地球に目をかけているから、地球の言葉に着目しているというはまだわかるが、ピンポイントに日本語を習っている確率は低いだろう。
地球人みんなに通じる言語があればいいな……ということで、昭和からずっと地球に来続けているウルトラマンたちから言語データをもらってヒカリが(ヒカリは何でもできると思っている)どうにかして「地球の言葉」を生成したのではないのだろうか。
ゼットの習得した「地球の言葉」の精度が低いから不思議な感じになってしまっているだけで、ほんとうはタイガみたいに流暢に聞こえるのかもしれない。
もし全地球人に通じる謎の言語があるのなら、ゼットとハルキには光の国からその文法書を持って帰ってきてほしい。

まとめ:地球の言葉はウルトラ難しいぜ

主に言語学的な観点からゼットのことばについて色々と考えてみたが、データが少なかったため、脚本家ごとの違いなどについては触れることができなかった。これから映画などでもっとゼットくんが喋ってくれることに期待したい。
最後に、ゼットの日本語の発音は完璧であり、多少違和感があっても意味は通じていたことには着目したい。他の言語をそのレベルにまで持っていくにはかなりの練習が必要だ。
国際語となっている英語では、「ネイティブのようになる」のではなくて、「非ネイティブ同士でもコミュニケーションがとれる」ような英語を目指していったほうがいいというような動きもある。そういった観点では、ゼットの日本語はあれはあれでいいのではないだろうか。
少なくとも私の英語のレベルよりはゼットくんの日本語レベルのほうが高い。コミュニケーション取れてるよ!大丈夫!

 

参考文献
ウルトラマン言語学」秋月高太郎(2012)
「続・ウルトラマン言語学」秋月高太郎(2013)
母語干渉とうまくつきあおう』丹波牧代(2019)
「属性表現をめぐって」西田隆政(2010)
文化庁 敬語おもしろ相談室 https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/keigo/index.html
文化庁「敬語の手引」https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf
ECCフォリラン こんなにある世界の言語!?世界で最も使われている言語は?https://foreignlang.ecc.co.jp/know/k00010/

 

 

 

 

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*1:総集編ナレーションを除く。配信サービスの見逃しにあると思ったらなかったので…

*2:ゼットは、ボイスドラマでも「ウルトラ」を多用しており、これはゼットの日本語の問題というよりも、ゼット個人の持つ個性的な表現なのではないだろうか。

*3:以下、かっこ内は話数

*4:フィクションや翻訳で使われている役割語の功罪についてはこちらの記事が興味深い。
ハーマイオニーと女幹部 「女ことば」は男が作る【言語学者・中村桃子】https://noisie-s.net/gender/164/